アリババ、「日本中小企業と世界を結ぶかけ橋に」
中国のITベンダーは、企業向けのネット・サービスでも日本市場へ参入し始めている。その最大手は、ソフトバンクが出資していることでも知られる、企業間取引サイトのアリババグループ(阿里巴巴集団)だ。日本市場への本格参入に向け、着々と準備を進めている同グループは、どのような戦略を描いているのか。日本法人の代表である孫炯(そん じょん)氏に聞いた。
アリババは中国最大手の企業間取引サイトと言われているが、具体的にはどのような事業を手がけているのか。
アリババ 代表取締役 孫 炯 氏
アリババグループの事業の中核になっているのが、BtoBの取引サイト「Alibaba.com」だ。さまざまな業種の中堅・中小企業が製品や部材を取引するWebサイトで、グローバルで2400万のユーザーが利用している。企業数でも360万近くに上る。
中国におけるBtoBサイトの売上高の5割以上は、Alibaba.comが占めている。サイトの運営主体は、アリババグループの子会社であるアリババ・ドットコム(Alibaba.com Limited)で、同社は2007年11月に香港市場に株式を上場したばかりだ。
このほかにも、いくつかのサービスをネット上で提供している。CtoCのオークション・サイト「Taobao.com」、企業または個人向けの決済サービス「支付宝」、顧客管理ソフトなどをオンラインで提供する「Alisoft.com」などだ。最も新しいサービスとしては、2007年8月に立ち上げたネット広告の取引サイト「alimama.com」がある。
日本向けサービスの現状は。
「Alibaba.com」には既に日本語ページを開設しており、ユーザーが利用できる状況になっている。2007年には日本法人を立ち上げ、いよいよ本格的にビジネスを開始する準備が整った。
アリババグループは2000年にソフトバンクから出資を受け、それ以来、パートナとして一緒に歩んできた。早ければ2008年4月にも、ソフトバンクとアリババ日本法人のジョイント・ベンチャーとして合弁会社を立ち上げ、日本向けの事業を本格化する予定だ。
徹底的に“日本化”を進める
ソフトバンクと組むのは、株主だからか。
いや、それだけではない。ソフトバンクはYahoo!を日本で成功させた実績がある。海外のサービスを日本に持ち込んでも、必ずしも成功するとは限らない。eBayなどのように、本国である米国ほどには規模を拡大できないでいるサービスは数多い。
その点、ソフトバンクはYahoo!を「日本のYahoo!」にすることに成功した。もはや日本国民の生活にはなくてはならないサービスにまで成長している。アリババも徹底的に現地化を進める方針だ。
現地化のノウハウを持っていることはとても重要だと考えている。ソフトバンクには、Yahoo!BBというブロードバンド・インフラも、ソフトバンク・モバイルというモバイル通信のインフラもある。ソフトバンクと組むことで、まだネットワーク・インフラが整っていない企業にもサービスを提供できる可能性が出てくる。
Alibaba.comのターゲットは、どのくらいの規模の企業なのか。
中堅・中小企業だ。日本も中国と同様に中堅・中小企業の数が多い。そういった企業がビジネスを拡大するためのインフラを提供する。日本の中堅・中小企業は、昔ながらの流通経路を使って商取引をする伝統がある。ECサイトを十数%しか利用していない、という調査結果もある。
ただ、これから日本では少子高齢化が進み、市場全体の規模が縮小する可能性が高い。これまで通りのビジネスを継続するだけでは、中堅・中小企業の経営は厳しくなるのではないか。
Alibaba.comは、そういった企業のビジネス・チャンスを広げる取引サイトだ。日本企業が利用すれば、中国企業の安い製品を購入できるだけでなく、製品を中国企業に売り込むこともできる。
どれほど活きのいい魚でも、小さな水槽では、できることは限られている。大海に出て活躍の場を広げるべきだ。
日本企業にも学ぶことがある
日本の中小企業にとっては“言葉の壁”が厚いのではないか。
アリババ・ドットコムは現在、Alibaba.comで扱う50万点の商品情報の日本語化を進めている。早ければ3月中、遅くとも4月までに、翻訳を終える予定だ。その後も新しい商品の日本語化を進めていく。
商品情報の登録や商品のやり取りについては、定型的なものをテンプレート化し、日本のユーザーが最小限の情報を入力するだけで、中国語や英語に自動翻訳するシステムを現在構築している。この翻訳システムにはかなりの投資をしている。
とはいえ、日本語だけですべての業務が完結するわけではないのでは。
もちろん、翻訳システムですべてをカバーできる訳ではなく、日本のユーザーが外国語を使わざるを得ないシーンも出てくるだろう。日本の中小企業も変わらなくてはならない。生き残るために海外市場へ参入するなら、その国の言語や商習慣などを学ぶ必要がある。日本の中小企業には年配の経営者も多いため、新しく外国語を学ぶのは大変だろう。また、ITに不慣れな経営者も多いかもしれない。
そのようなユーザーを、アリババ・ドットコムはできるだけ支援していくつもりだ。Webサイトの使い方を簡単に学べるオンライン教材を用意し、コールセンターも充実させる。
アリババ・ドットコムは、単に日本で収益を上げたいから日本市場に参入するわけではない。収益が目的なら、ソフトバンクとの合弁という形態は取らなかったかもしれない。その合弁会社に当社が出資する比率も、3割前後になる予定だ。
日本の中堅・中小企業を支援し、中国をはじめとする海外の企業と取引するための橋渡し役になる。それがアリババ・ドットコムの望みだ。中国企業に対しても、海を越えて日本企業と取引する、という大きなメリットを提供していきたい。